温泉の種類と効能を、環境省の温泉の定義と分析の指針、温泉利用の手引き「あんしん・あんぜんな温泉利用のいろは」で確かめ、青森県内の温泉の泉質を各施設の公式サイト、黒石観光協会、青森県の観光サイト「Amazing AOMORI」で並べました。

効能は環境省の資料の「適応症」の語で書き、人気や評判は扱っていません。

温泉と療養泉の違い

昭和23年に制定された温泉法では、地中から湧き出す温水、鉱水、水蒸気その他のガス(炭化水素を主成分とする天然ガスを除く)のうち、温泉源から採取するときの温度が摂氏25度以上か、溶存物質(総量1,000mg以上)など定められた物質のいずれか一つを含むものを温泉としています。

温泉のうち特に治療の目的に使えるものを「療養泉」といい、温度が摂氏25度以上か、1kg中に溶存物質総量1,000mg以上、遊離二酸化炭素1,000mg以上、総鉄イオン20mg以上、水素イオン1mg以上、よう化物イオン10mg以上、総硫黄2mg以上、ラドン111Bq以上のいずれかを含むものと定められています。

環境省の資料は、この療養泉の泉質ごとに適応症を示しています。

青森県の温泉地と源泉の数

環境省の「令和6年度温泉利用状況」(令和7年3月末現在)では、青森県の温泉地は120か所、源泉は1,089(利用源泉550、未利用源泉539)です。

温度別の源泉数は25度未満が35、25度以上42度未満が242、42度以上が670で、湧出量は毎分139,808リットルです。

温泉を利用する宿泊施設は216、温泉を利用する公衆浴場は249です。

泉温・液性・浸透圧の区分

環境省の「鉱泉分析法指針」は、湧き出したとき、または採取したときの温度を「泉温」と呼び、次の4つに分けています。

区分泉温
冷鉱泉25℃未満
低温泉25℃以上34℃未満
温泉34℃以上42℃未満
高温泉42℃以上

泉温は湧き出したときや採取したときの温度で、浴槽の湯の温度の区分ではありません。

液性は湧き出したときの pH で、酸性(pH3未満)、弱酸性(pH3以上6未満)、中性(pH6以上7.5未満)、弱アルカリ性(pH7.5以上8.5未満)、アルカリ性(pH8.5以上)に分けます。

浸透圧は溶けている物質(ガス性のものを除く)の量で、低張性(8,000mg/kg未満)、等張性(8,000mg/kg以上10,000mg/kg未満)、高張性(10,000mg/kg以上)に分けます。

泉質名には「等張性 中性 高温泉」のように、浸透圧・液性・泉温の順で区分が付きます。

青森県内の温泉の泉質名を読む

県内の施設が公表している泉質名と泉温を並べました。

温泉公表されている泉質泉温
ホテル秋田屋(浅虫温泉)単純泉(低張性弱アルカリ性高温泉)59.8度
蔦温泉旅館の久安の湯(十和田市)ナトリウム・カルシウム-硫酸塩・炭酸水素塩・塩化物泉(低張性中性高温泉)45.4度
温湯温泉(黒石市)ナトリウム-塩化物泉-硫酸塩泉(低張性弱アルカリ性高温泉)52℃
酸ヶ湯温泉(青森市)酸性硫黄泉(含石膏、酸性硫化水素泉)(公式サイトの表記。Amazing AOMORI は酸性硫黄泉)52.3度(Amazing AOMORI の値)
谷地温泉の下の湯(十和田市)単純硫黄温泉「硫化水素型」(低張性弱酸性温泉)38度

たとえば秋田屋の「低張性弱アルカリ性高温泉」は、溶存物質が8,000mg/kg未満、pH が7.5以上8.5未満、湧き出したときの温度が42℃以上という意味になります。

谷地温泉の下の湯は泉温38度で、泉温の区分では「温泉」(34℃以上42℃未満)にあたります。

泉質名は、明らかな誤字を直したうえで、施設や資料ごとの表記で書いています。

同じ温泉でも資料によって表記が違うことがあり、温湯温泉は、黒石観光協会の温泉の案内ではナトリウム-塩化物泉-硫酸塩泉、温湯温泉共同浴場のページではナトリウム・塩化物泉と書かれています。

10の泉質と、県内の6つの泉質の浴用の適応症

「あんしん・あんぜんな温泉利用のいろは」は、療養泉を温度か主な成分で、単純温泉・塩化物泉・炭酸水素塩泉・硫酸塩泉・二酸化炭素泉・含鉄泉・酸性泉・含よう素泉・硫黄泉・放射能泉の10種類に分けています。

このうち、この記事で取り上げた県内の施設の泉質名に出てくる6つについて、同じ資料の説明と浴用の泉質別適応症を並べました。

泉質資料の説明浴用の泉質別適応症県内の例
単純温泉溶存成分(ガス成分を除く)が1,000mg/kg未満で泉温25℃以上。「刺激はマイルド」自律神経不安定症、不眠症、うつ状態ホテル秋田屋、青森屋 by 星野リゾート、ランプの宿 青荷温泉
塩化物泉陰イオンの主成分が塩化物イオン。「皮膚に塩分が付着するため、保温効果・循環効果があります」きりきず、末梢循環障害、冷え性、うつ状態、皮膚乾燥症黄金崎不老ふ死温泉、青森まちなかおんせん、温湯温泉
炭酸水素塩泉「皮膚の角質を軟化する作用があります」きりきず、末梢循環障害、冷え性、皮膚乾燥症蔦温泉旅館の久安の湯
硫酸塩泉陰イオンの主成分が硫酸イオンきりきず、末梢循環障害、冷え性、うつ状態、皮膚乾燥症蔦温泉旅館の久安の湯、温湯温泉
酸性泉「酸性が強いと入浴で皮膚にしみ、口にすると酸味があります。殺菌力が強いです」アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬、表皮化膿症、耐糖能異常(糖尿病)酸ヶ湯温泉
硫黄泉「殺菌力が強く、表皮の細菌やアトピー原因物質を取り除きます」アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬、慢性湿疹、表皮化膿症(硫化水素型は末梢循環障害が追加)酸ヶ湯温泉、谷地温泉の下の湯

蔦温泉の久安の湯のように2つ以上の泉質に当てはまる温泉には、当てはまるすべての泉質の適応症があるとされています。

酸ヶ湯温泉の公式サイトは、5つの源泉の泉質はすべて酸性・含硫黄泉で、療養泉として効能が認められていると書いています。

泉質を問わない一般的適応症

同じ資料は、泉質を問わず共通する一般的適応症として、次を挙げています。

  • 筋肉や関節の慢性的な痛み・こわばり(関節リウマチ、変形性関節症、腰痛症、神経痛、五十肩、打撲、捻挫などの慢性期)
  • 運動麻痺による筋肉のこわばり
  • 冷え性、末梢循環障害
  • 胃腸機能の低下
  • 軽症高血圧、耐糖能異常(糖尿病)、軽い高コレステロール血症
  • 軽い喘息、肺気腫、痔の痛み
  • 自律神経不安定症やストレスによる諸症状(睡眠障害、うつ状態など)
  • 病後回復期、疲労回復、健康増進

資料は、温泉療養の効用は特定の病気を治すことよりも、症状や苦痛を和らげ、健康を回復・増進させるなど全体的に改善するものだとしています。

十分な効用を得るには2〜3週間程度の療養期間が適当とし、温泉療法医など専門的な知識のある医師の指導のもとで行うよう勧めています。

酸ヶ湯温泉の公式サイトは、湯治の日数の目安を10日位(3日1廻りで3廻り)とし、1日の入浴回数は初めの数日間は1〜2回程度、その後3回まで増やすよう案内しています。

酸ヶ湯温泉は、環境省の国民保養温泉地一覧表で青森県の国民保養温泉地として載っており、指定年月日は昭和29年10月11日です。

入ってはいけない人と入浴の注意

環境省の資料の禁忌症では、酸性泉と硫黄泉には、皮膚や粘膜の敏感な人と、高齢者の皮膚乾燥症の人は入ってはいけないとしています。

同じ資料は、禁忌症にあたる場合でも、専門的知識をもつ医師の指導で温泉療養を行える場合もあると書いています。

酸ヶ湯温泉の公式サイトも、浴用の禁忌症に皮膚・粘膜の過敏な人(特に光線過敏症の人)と高齢者の皮膚乾燥症を挙げています。

Amazing AOMORI の酸ヶ湯温泉のページは、強酸性泉(pH1.5~2.0)で肌や粘膜への刺激が強い泉質だとして、子どもの入浴時間の目安を乳幼児は1~3分程度、幼児・小学生は3~5分程度としています。

環境省の資料が挙げる入浴の注意は次のとおりです。

  • 食事の直前・直後と飲酒後の入浴は控える
  • 高齢者・子ども・身体の不自由な人は1人きりで入らない
  • 入浴の前と後に水分をとる
  • 過度に疲れているときや運動後30分間は入浴を控える
  • 手足から全身にかけ湯をし、身体を洗ってから湯船に入る
  • 浴槽にタオルを入れない
  • 高齢者や、高血圧・心臓病・脳卒中の経験のある人は42℃以上の高温浴を避ける

身体についた温泉成分は洗い流さずにタオルでふきとるとしたうえで、酸性泉や硫黄泉のように刺激の強い泉質では、肌の弱い人は温水などで洗い流すよう案内しています。

温泉療養を始めておおむね3日〜1週間前後に湯あたりの症状が出ることがあり、その間は入浴を中止するか回数を減らすよう勧めています。

泉質で温泉を選ぶときに確かめること

  • 施設が公表している泉質名と、浸透圧・液性・泉温の区分
  • 禁忌症に当てはまらないか(酸性泉・硫黄泉は、皮膚や粘膜の敏感な人と高齢者の皮膚乾燥症の人は入浴を避ける)
  • 日帰り入浴の時間と料金の変更(酸ヶ湯温泉は2026年12月1日から大人1,500円、9:00〜16:00)

宿ごとの浴場と夕食は夕食まで館内でとれる温泉宿の記事、出張や家族旅行など用途ごとの宿は用途で宿を絞り込む記事、温泉旅館と街なかのホテルの違いは宿の種類ごとの浴場の一覧で扱っています。

泉質と適応症は環境省の「温泉の定義」「鉱泉分析法指針(平成26年改訂)」「あんしん・あんぜんな温泉利用のいろは」(平成31年3月)「令和6年度温泉利用状況」、施設の泉質は各施設の公式サイト、黒石観光協会、Amazing AOMORI で、2026年10月に確かめた時点のものです。

持病のある人や療養のために入浴を考えている人は、環境省の「あんしん・あんぜんな温泉利用のいろは」や環境省の温泉の定義のページを読んだうえで、医師に相談してください。